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歳をとるということ

自然の営みに目を向けて季節ごとの行事や風物詩を楽しむ、 なんていう余裕もなく過ごしている2020年・・・ そうしてふと気がつけば、8月も下旬、 わたくしごとですが今年も一つ歳をとりました。 父が言っていたある言葉が、ストンと腑に落ちるようになったのは、 人生の折り返し地点を過ぎたなと思う頃からだったでしょうか。 「誰だって、歳をとるのは初めてです」 当たり前すぎるほどシンプルなことなのですが、 言われてみると、「そうか、確かに!」と思いませんか? 自分が子供の頃を考えると、例えば祖父母は年齢に関わらず 最初から「おじいちゃん」「おばあちゃん」でしたよね。 子供や若者から見れば、お年寄りは人生の先輩であり、経験も豊かで 堂々と歳を重ねていて、”歳をとるベテラン” みたいに見えたものです。 永六輔という人は、高齢になるにつれて「老い」や「死」に ついて書いたり語ったりすることが増えていきましたから 「老いていくこと」についてもエキスパートのように思われる イメージがあったと思います。 娘である私もいつからかそんなふうに見ていました。 でも、ある時、父が書いた文章にこの 「歳をとるのは初めて」という言葉を見つけて目から鱗の思いでした。 そこには歳をとることに対する好奇心と同時に

少しばかりの心細さも感じられて・・・

人が生まれて最初のうちは、ハイハイができるようになったり、 立つことができるようになったり、歩けるようになったり、と 成長段階の出来事が劇的な分、「初めての〜」が目立ちますが、 80代だろうと90代だろうと100歳を越えていようと 幾つになっても、その人にとってはその年齢になるのは初めてで 一生を通じて未知の世界に足を踏み入れているんですよね。 我が身を振り返っても 40代、50代で体力の衰えは確実に来ましたし、 年数分駆使してきた身体はあちこちガタが来ています。 「あれ?前はこんなじゃなかったのに」という場面は日常茶飯事。 一方で、この歳まで来たからこその精神的な余裕なんてものも ちょっとは出てきます。 60代ってこんな感じか、70代は、ああ、なるほどこうか・・、と 人はそれぞれ初めての状況を生きていく。 それは別に衰えやがっかりするようなことばかりではなくて、 ワクワクするような新しい発見もするでしょう。 私の祖父母は、ありがたいことに四人とも90歳を越える長寿でした。 母は70代に届かず68歳、父は83歳であちら側へ逝きました。 両親とも見送った今は、「次は自分だ」とある意味覚悟ができます。 どの辺りまで初めての年齢を経験することになるかは分かりませんが、 自分の「老い」にも「病」にも好奇心いっぱいで面白がっていた父、 そしてそれに伴う心細さもゆったりと受け容れていた父のように 歳をとっていけたら・・・、と考える8月です。 おしまいに 今年は、新型コロナウィルスのために 花火大会もほとんどなかった夏だったので、 花火を詠んだ六輔俳句を・・・ 《八月の一句》 花火終え煙も消えて星戻る    (1986年)




撮影・中井征勝

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​文:永麻理

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